愛することが罪なら
 
 
志摩子と乃梨子。初めて二人で過ごす冬休み。
夏休みに日帰りでいける教会、お寺を回り尽くしてしまった二人は、初めて泊まりがけで鑑賞旅行へ出向くことになるのだが……?
甘かったりシリアスだったりする、ちょっと長いお話。
 
*        *        *
 
一章 
「本当ね。以外と温まるわ」
 ゴマ団子を口に放り込み、足を揺り動かしながら笑顔を浮かべる志摩子さんが、愛に愛らしい。宿泊場所を温泉街にして良かったと、私は心の底から思った。
 
二章 
「志摩子さん……」
 胸の最奥を責付くような疼きは、愛しい気持ちを加速させていく。もっと触れたい、もっと知りたい。こんなにも好きだから、私は。
 
三章 
「ああ――」
 呟き、転がって仰向けになる。ぽっかりと宙を穿つように光る照明は、今は何の役にも立たない。
 
四章 
 私の心はまるで森のようだ。木々に視界を阻まれ、ただその深みへとはまっていく。
 ずるずると、出口を求めて。

 
五章 
「どうして……」
 心の内に収まり切らなかった想いが、声帯を震わせる。
 どうして私たちは、こんなにも優しく傷つけ合わなければいけないのだろう?
 
六章 
「まだ、何も言ってないじゃない」
 錆びて文字の読めなくなった看板に向けられた言葉は、何の響きも持たずに消えた。
 
七章 
 諸行無常、この世で変わっていかないものはない。
 永遠があるのだとしたら、それは死だけ。曲げようも変えようもない、その事実だけ。――けれど、そんな道は悲しすぎるから。
 
終章 
 乃梨子の瞳を覗き込む。
 きっと、『うん』と言ってくれると信じて。
「ううん」
 しかし乃梨子は、かぶりを振った。  
 
 

 
 
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