■ 愛、しあう? 五話『Pleasure & Treasure』 「……電気は、消して」 寝室に入った瞬間に由乃さんはそう言ったから、祐麒は黙って照明を落とした。その代わりに行灯を模した照明をつけると、辺りは一気に妖しげな雰囲気になる。 「何か、緊張する」 そう言った由乃さんの肩に力を入れて、掛け布団を除けた布団に座らせる。何も言わずに浴衣の帯を緩めようとする由乃さんを制して、祐麒は抱き締めるように彼女の後ろに腰を下ろした。 「な、何で後ろからなの」 「前からだと、行灯の光が当たらないじゃんか」 枕元にある行灯しか照明がないから、こうしないと由乃さんの身体が見にくい。由乃さんは理由を聞き届けるやいなや文句を言いたそうな顔をしたけど、その唇が開かれる前に、祐麒の唇で塞いだ。 「ん……ぅ」 由乃さんの顔を少しだけ横に向けて、唇を貪る。キスしにくいけれど、顔の角度がいつもと違うお陰で深くまで楽しめる。 いつもと同じのはずの、ピンク色の唇。それは何故だかいつも以上に柔らかく、熱い。溶け合うように唇で唇を噛み、舌で口内を蹂躙する。 たっぷり一分以上は由乃さんの唇を味わうと、祐麒はゆっくりと唇を離した。由乃さんの方からぱさりと三つ編みの髪の毛が滑り落ち、唇と唇に掛かった唾液の橋が淫らに光る。 「もう一回訊くけど、いいんだよね」 「……うん。いいよ」 「体調は?」 「大丈夫だってば」 右手で額の温度を確かめ、熱がないかどうか確認する。 どうやら大丈夫のようだと分かると、祐麒は由乃さんの浴衣の帯を解き取った。 「……」 由乃さんは気持ち俯いて、無言でそれを受け入れる。 「脱がすよ」 「う、うん……」 祐麒はそう確認してから、ゆっくりと浴衣を脱がした。下に着ていたシャツをバンザイさせて脱がすと、たちまち下着姿になる。 その姿に、酷く欲情する。薄桃色の、可愛らしいブラジャーとショーツ。清純であるはずのそれは、由乃さんが着ているというだけで堪らなく扇情的だった。 「由乃」 祐麒は由乃さんの胸の前で腕を組むように、少しだけきつく抱き締める。俯いた由乃さんは、撫でるように祐麒の腕に触れる。 由乃さんが拒絶しないことを確認してから、ゆっくりと腕を解いた。前に垂れていた三つ編みをどかして、ブラジャーの上に手を添える。マシュマロでも摘むかのように手に力を入れると、あしらわれたレースが歪み、乳房が形を変える。 それを見ていると激しく揉みしだきたい衝動に駆られたけど、そうはしない。まだ理性は残っているし、もっとゆっくり由乃さんを味わいたい。 「こっち向いて」 恥ずかしそうにこちらを向く唇を、顔を傾けて向かえ入れる。熱い唇でねっとりと、淫逸な舌で執拗に、由乃さんの口内を犯す。歓喜ではなく、悦びで心が満たされた。 唇から時折漏れる甘やかな声。それに導かれるように右手を右胸、左手を左胸にそえ、マッサージするように動かす。手のひらを通してくる感覚に、だんだんと満足がいかなくなる。 「ん、はぁ……」 深いキスを続けながら、祐麒はブラのホックを外した。それをするりと脱がせると、ようやくキスを終わらせる。 由乃さんの肩口から視線を落とし、乳房を鑑賞する。大きい方とは言えないけれど、綺麗な形をした胸。初めてみる裸の胸に、理性の枷が外されていく。 少し力を入れて揉めば、すぐに肋骨の感触に行き当たった。しかし、その指を押し返そうとする弾力は確かにあって、柔らかさに溺れたくなる。 「由乃」 「……何?」 「気持ちいい?」 「う、うん……」 小さく震える声で言う由乃さんが可愛らしくて、苛めたいという気持ちが沸き立つ。今まで感じたこともないような強い情動が、心を支配していく。 真ん中に寄せるように胸を揉むと、人差し指と親指で乳首を摘み上げた。それに甘い声が漏れたのが嬉しくて、指の腹で乳房の頂を撫でる。 「ひゃ、ん……」 耐えるように目を瞑る由乃さんが、どこまでも愛しい。もっとその表情が見たくて、祐麒はするりと手を下へ這わす。丹田を超え、ショーツの上に手がくると、由乃さんはきゅっと足を閉めた。 「力を抜いて」 「……うん」 興奮しているはずなのに、声は思いのほか冷静だった。 由乃さんは少しの逡巡の後、ゆっくりと足から力を抜く。祐麒の手が太ももを撫でるとまた閉じそうになって、それを必死で堪えるのが、これでもかというほど情欲を燻った。 細い足、細い腕。力を入れれば折れてしまいそうな繊細さは、間違いなく女性のもの。きめ細かい肌を撫でながら、やがてショーツの上へと手を持ってくる。 「きゃ……」 「由乃」 また閉じてしまった足を、太ももを撫でて開かせる。乱暴にはしないから、と耳元で言うと、由乃さんは小さく頷いた。 由乃さんが落ち着いたころを見計らって、ショーツの上からスリットをなぞる。下着はその下にある女性器の形を、曖昧に教えてくれた。 「ひ、んっ……あっ」 それでも由乃さんには快楽を与えられているようで、祐麒は尚も優しく撫でる。やがて下着越しでも湿りが分かるようになると、祐麒の方ももどかしくなってきた。 「……脱がしていい?」 祐麒がショーツに手をかけて言うと、由乃さんは顔を背けた。 「い、一々訊かないでよっ」 その反応が、逐一祐麒の欲望を鼓舞する。 祐麒は「分かった」と言うと、由乃さんに腰を上げて貰い、ショーツを脱がしていく。 「こ、ここからは自分で脱ぐから」 膝でショーツが引っかかると、由乃さんはするりとそれを脱ぎ去る。 そうして由乃さんは、初めて祐麒の前で生まれたままの姿になった。 くるぶしでひっかかった下着を蹴るようにして脱ぎ捨てると、由乃は一糸纏わぬ姿としてそこに存在していた。 「――由乃」 そう言って、祐麒君は由乃の身体を抱き締める。いつもはドキドキとして、それでも暫くそうすれば安心できるのに、今はそうもいかなかった。 男の子の前で、自分の裸を晒す。その恥辱は想像通りに大きく、今頃由乃の顔は真っ赤なんだろうなと思う。 それでも、嫌だとは言えない。それを言うことは、覚悟を決めた自分に対して負けることになるから。 「寒くない?」 「……うん」 声に反応して祐麒君の方へと顔を向ければ、すぐさま唇を奪われる。吸うように、食べるように、貪るように、ひたすらに舌を絡め合う。 由乃を抱き締めていた腕が解かれ、ゆっくりと胸へ。五指それぞれの動きで乳房を揉むと、やがてその頂へと標的を移す。 「あっ……!」 一際強く乳首を摘まれ、思わず唇を離す。祐麒君の唾液の味が、名残惜しそうに口内に残る。 祐麒君は頬を由乃の耳の辺りに触れさせながら、尚も攻め立てる指を動かした。それが由乃の敏感なところを刺激するたび、セーブできない声が漏れる。 「ん、あ……っ。そういうこと、どこで覚えてくるの……?」 そういうこと、とは、この手付きのことだ。 由乃が胸を揉みしだく手に添えて訊くと、祐麒君は手を休ませずに答える。 「覚えてくるっていうか、前からこういうことしたいと思ってたこと、してるだけだよ」 なるほど――。祐麒君は、由乃が思っていた以上に、性欲旺盛だったということか。 それは相手が由乃だからという理由なら嬉しいけど、その辺どうなんだろう。 しかしそれは今考えることじゃないと、だんだん下がってくる祐麒君の右手が言っている。 「ひぁっ……!」 祐麒君の手が恥毛をかき分け、由乃の入り口を捜し当てる。それに驚いて足を閉じると、また優しく祐麒君の手が太ももを這った。 力が緩み、だんだんと開けられていく。ついにはMの字に足を開かされ、恥ずかしさから顔を覆ってしまいたくなった。 でも、祐麒君の顔がすぐそばに迫っていたらそれも出来ない。軽く開いた唇から侵入してくる舌に、思考能力が低下していく。祐麒君の右手が膣の入り口を撫でるたびくぐもった喘ぎ声が漏れ、その指が少しだけ怖くなる。 「うんっ……んぅっ、んっ……!」 「由乃、……可愛いよ」 祐麒君が耳元でそう囁くと、不思議なぐらい怖いと思う気持ちが和らいだ。 再開された深いキスで舌と唇が音を立てると、それが合図かのように祐麒君の指が由乃の膣内に侵入してくる。 「んっ! あっ、はぁ……っ!」 それに一オクターブ高い喘声が漏れ、祐麒君の指が浅い部分で蠢く。 まったく、未知の感覚だった。 胸を触られるのとは、段違いの気持ちよさ。これがいわゆる快楽なんだと認識すると同時に、由乃は布団のシーツを掴んだ。 「由乃、……どう?」 「う、んっ……あぁ」 祐麒君の言葉に喘ぎで返すと、それだけじゃ満足できないのか、指が更に膣の奥へとのめり込む。腰から伝わってきた快感で、神経が悲鳴を上げている。 それが、不思議だった。例えばたまたまシャワーが当たったり、お風呂上がりに拭いたりしても何も感じなかったのに、祐麒君の指で弄ばれると全然違う。どうにかなりそうなぐらいの快楽が体中に回っていって、思わず腰が逃げそうになる。 だけどそうすれば、自然と由乃のお尻が祐麒君の股間に擦り付けられることになる。その度に、由乃の腰の辺りに硬い感触があった。それは石のような硬さではなく、筋肉のようなしなやかさ持った硬さ。それが何なのか、由乃は薄々気付いていた。 「気持ちいい?」 「んっ、あぁ、う……んっ!」 「言ってくれなきゃ、分からないよ」 意地悪な言葉。意地悪な指先。 それが更に由乃を攻めたて、快感で言葉が詰まる。由乃のお尻に触れる何かが、更に硬さを増す。 「……由乃」 「あ、んっ……き、気持ち、いい、よ……っ」 細切れの言葉が紡ぎ出され、気持ちよさが募ってくるたびに指が激しくなる。膣の浅い部分を愛撫されているだけなのに、どんどんと腰が熱を帯びる。 「イキそう?」 「い、イキそうって?」 その答えが欲しくて振り返ったのに、祐麒君は質問に答えずに唇を塞ぐ。 吸い吐いてくるような激しいディープキスに、喘ぎ声が押し殺される。快感の逃げ場がなくなって、身体に蓄積されていくみたいだった。 「力を抜いて」 そんなこと言っても、シーツを掴む手を緩めることができない。気持ちよすぎて、何かにすがっていないと耐えられそうもなかった。 それでも祐麒君は由乃を嬲る手を休めず、膣内に入れた中指とは別に、親指でクリトリスをくすぐる。 「んぁっ、あぁ、んっ……!」 自分でも驚くぐらいの声量で、擦れ気味の嬌声が出てくる。いつの間にか膣からはピチャピチャといやらしい水音が出て、もう自分の意思じゃ止められなかった。 いやいやするように首を振ると、祐麒君は空いた左手で由乃の頬を撫で、左の耳たぶを唇で噛む。初めてされるその行為にドキドキして、腰の熱は上がっていくばかり。そして止めどなく溢れる喘ぎは、何度目かのディープキスで塞がれる。 「ふぁ、うんっ、ああぁっ!」 やがて開放された唇から、快楽の声が飛び出す。だんだんと思考は白くなってきて、全神経が気持ちよさだけを伝えてくるみたいだった。 「きゃぅ、やぁ……!」 一際高い快感の波がやってきて、声すら出なくなる。ビクビクと腰が震えて、陰唇が蠢く。 その波が過ぎ去り、「はぁ」と息を吐くと、由乃の全身から力が抜けた。 そして曖昧な視界で、自分の下に染みが広がっているのを視認する。快楽の残滓が残る頭で、これが「イク」ってことなのかなと思った。 祐麒は由乃さんを布団に寝かせると、浴衣とシャツ、それから靴下を脱いだ。 祐麒の眼下にあるのは、イッたばかりで蕩けそうな目をしている由乃さん。その生まれたままの姿とさっきまでの嬌声で、祐麒の思考は満たされている。 「ごめん。ちょっとムチャしたよね」 祐麒は由乃さんの負担にならないように覆いかぶさり、軽くキスを落とした。由乃さんの呼吸は、大分落ち着いてきている。 「大丈夫?」 「うん……。別に呼吸がつらかったわけじゃないから」 熱っぽい目が笑みに細められ、祐麒を捕らえる。それに引き寄せられるように唇を近づけると、由乃さんの腕が祐麒の頭を引き寄せ、自然と深い口づけになる。 さっきよりは幾分激しさを落とした、優しいキス。だけどその分濃度を増したようにねっとりと舌を絡ませ、緩慢な動作で貪り合う。やがて糸を引きながら唇を離すと、祐麒はまじまじを由乃さんの身体を見た。 行灯の光に映し出される、スレンダーな肢体。発育途上の色香に、クラクラと惹き寄せられる。 「あ、あんまり見ないでよ」 「どうして?」 高級な陶器のような、気品のある白い肌。きめ細かく、温泉のお陰でスベスベの肌は、張りと潤いに満ちている。 それなのに、由乃さんは――。 「その……そんなに綺麗じゃないし」 恥ずかしそうに視線を逸らし、軽く胸を隠す。それをいじらしく感じながら、祐麒はその手をどかした。 「どこがさ。……綺麗だよ。それから、凄く可愛い」 「そんなことない。だって、手術の跡とかあるし……」 由乃さんが随分に真剣に言うから、祐麒はさっきまで隠されていた胸を注視する。祐麒から見て右胸の、乳房の下の方。照明が薄暗いせいで気付かなかったけど、確かにそこには薄く抜糸の跡があった。 「祐麒にとっては、ないほうがいいよね」 そう言って苦く笑った由乃さんに、祐麒は大きく二回かぶりを振った。 それからおもむろに、手術の跡を舌でなぞる。 「んっ、……祐麒?」 「……そんなこと、全然ない。これは由乃が頑張った証でしょ? この手術の跡がなければ、今ここで由乃と一緒にいられなかった。だから俺にとっては、この跡は宝物だよ」 愛しむように、手術の跡を撫でる。 もう消えてなくなってしまいそうな、その証。それですら受け入れて愛したいと、心からそう思う。 「ゆう、き……っ」 「え?」 気が付けば、由乃さんの身体は震えていた。慌てて視線を上げれば、由乃さんの目尻には涙が浮かんでいる。 「ごめん、痛かった?」 「……違うの」 そのままぎゅっと抱き締められ、頬が胸の谷間に押し付けられる。祐麒はそれにどうしていいか分からずに、動けない――。 「私ね。今凄く、ここにいてくれるのが祐麒でよかったと思ってる」 ふと、祐麒を抱き締めていた力が緩む。顔を上げると、由乃さんは微笑んでいた。 困惑する祐麒の頬を、由乃さんは優しく撫でてくる。それが不思議なぐらい、祐麒を落ち着かせてくれる。 「私もう、祐麒じゃないとダメみたい。祐麒じゃないと、きっと」 小鳥がさえずるような声を聞きながら、少しだけ冷静になった心で今するべきことを導き出す。 祐麒は由乃さんの顔に唇をよせると、その双眸から零れ落ちそうな滴をキスで乾かしていく。ポロポロと零れ落ちそうになる涙が想いだとしたら、それを全部拾っていこう。 「祐麒、くすぐったい」 潤んだ目で笑う由乃さんが、本当に。本当に愛しくて、もうどうしようもない。 「……愛してる」 きっとそんな言葉じゃ、伝え切れない。どれだけ由乃さんのことが好きで、愛していているかなんて、それを全部言い終わる頃には夜が明けているだろう。 だから祐麒は、今まで一番優しくキスをした。拙いぐらいに、もどかしいぐらいに、優しく。 「……しないの?」 キスを終えると、由乃さんは試すような目で祐麒を見る。キスに溺れて、情事の最中だと言うことを忘れていないか、と。 それに祐麒は由乃さんの首筋に舌を這わすことで応える。首筋から、耳たぶへ。今度は下にさがって鎖骨へ、乳房へ。 「あ、んっ……」 乳首に舌を這わせると、可愛い喘ぎが耳朶に触れた。そのままその蕾をコロコロと転がせば、一層その喘ぎは甘くなっていく。 馥郁とした香りに、忘れかけていた性欲が刺激される。それでも心と身体は別なのか、祐麒の男性器は血が巡ったままだった。 「いいんだよね……?」 最終確認とまでに、由乃さんに問いかける。それに由乃さんは、無言で頷いて答えた。 祐麒自身も覚悟を決めて、トランクスに手をかけた。引っかかってくる棒を強引に振りほどき、由乃さんと同じく全裸になる。 「うわっ……」 勃起しきった祐麒のペニスを見て、由乃さんは小さく声を上げた。 「な、なんでそんなに大きいの?」 「なんでって……。そういうものだから」 「そんなの、入るの?」 「うん、多分……」 一々答えるのも恥ずかしい。じっと自分の性器をみられる辱めに耐えられなくて、祐麒はまた由乃さんの唇を求めた。 覆いかぶさった拍子に亀頭が由乃さんの恥毛にかすり、それすらも快感に代わる。――ビクビクと、脈打つ。 「ちょっと待ってね」 ディープキスを終えると、祐麒は枕元にある小さなタンスの引き出しを開けた。 避妊具は持ってきていない。しかしこういう旅館ならもしやと思って調べてみたら、ちゃんとあったのだ。このタンスの中に。 コンドームを袋を裂くと、祐麒は精液溜まりの空気を抜き、ペニスへと装着する。しかし。 「あれ?」 ローション付きのせいなのか、上手く根元の方までいかない。次こそはと思って、二度目はローションの滑りに注意してかぶせたけれど、やはり棹の中ほどより下にいかない。 (……不良品か?) 三度目も、四度目も同じ。コンドームはどうやっても根元の方までいかず、このまましたら膣内でとれてしまうという装着の仕方しかできなかった。 あれこれしているうちに、由乃さんの瞳に不安の色がのる。早くしなくちゃと思ったら余計上手くいかず、結局六枚つづりのコンドームを全て無駄にしてしまった。タンスのどの引き出しを開けても、もう予備はない。 「ごめん、……このままでもいい?」 「う、うん……」 本当は避妊をしなくちゃいけないのは分かっている。それでも他に手はなくて、それにここで止めるのは由乃さんに失礼だ。 祐麒はちゃんと濡れているか確認がてら、いきなりだなとは思いつつも膣に舌を這わせた。 「やっ、祐麒……っ」 由乃さんの手が頭に添えられ、祐麒の動き止めさせようとする。 「そんなところ、汚いから。恥ずかしいし……」 いつもは本当に恥ずかしくても口には出さないのに、由乃さんは気持ちを吐露してくる。それだけ素直になれてきているのかな、と思うと嬉しくて、祐麒は更に悦ばせようと舌を尖らせる。 綺麗なサーモンピンク色の、由乃さんの女性器。初めて生で、しかもこれだけ近くでみるそれに、欲望が膨らんで弾けそうになる。 「ひぅ、あぁ……っ」 貫きたい。早く中へ。味わい尽くしたい――。 情動は激しく祐麒を責めたて、何もされていないペニスまでもがヒクつく。 祐麒は十分に濡れていることを確認すると、反り返った肉棒に手を沿え、由乃さんの入り口に這わせる。そして、ゆっくりと腰を突き出し――。 「あれ……?」 そのまま、膣の上を滑る。何度手を沿えてやっても、裏筋が由乃さんの恥毛に撫でられるのみ。 その柔らかな気持ちよさに、思わず射精感が募る。さっきまで由乃さんのお尻で攻め続けられ、それだけで果ててしまいそうになっていたのだ。思っているよりずっと、興奮している。 今度こそ、と気合を入れて突き入れようとしても、また陰唇を撫でるのみ。射精を我慢している肉棒が、またピクピクと脈打った。 (やばい……) 本当にもうそろそろ出てしまいそうだった。入れる前に射精するなんて情けない事態は、どうしても避けたい。 「……ゆ、祐麒」 その言葉に視線を上げると、由乃さんは顔を逸らし、頬を真っ赤にして言った。 「そ、そっちは、おしっこの穴だから……」 「あ……。ご、ごめん」 あまりの失態に、思わず赤面する。じゃあ本当の膣口はどこなんだろうと迷っていると、由乃さんの手が股間に伸びた。 肉棒に触れると一瞬「きゃっ」と言って手を逃し、それでも思い直したように手が添えられる。由乃さんの白く細い指が祐麒のペニスを包んでいるというだけで、その事実が言いようもない快感に変わる。 「えっと……。ここ」 由乃さんの誘導どおりに腰を突き出すと、亀頭が膣に埋没する。その瞬間、ぞくりと快感が背中を走った。 まだだ。亀頭だけへの刺激で果てるわけがない。そう決め込んで、もう少しだけ奥へ。 「うっ、あっ……」 ベニスの先が何かに触れた瞬間、尿道が緩み、鋭い快感に満たされる。 まさかを思って結合部を見れば、亀頭とカリ首あたりが由乃さんの膣に埋没した状態で、肉棒がビクビクと脈打っていた。それで祐麒は、やっと自分が射精したのだと理解した。 「うわっ、ごめん!」 慌てて抜いてみても、遅い。ビクンビクンと続いていた射精は、ピュクッと由乃さんのクリトリスに精液を吐き出して終わりを告げた。 「え……。もう出たの? 中で?」 「その、……ごめん」 なんて、情けない。それに何てことをしたのだろう。……まさか、処女膜に向かって射精するなんて。 祐麒が頭を抱えそうになると、由乃さんがゆっくりと身を起こした。そしてそのまま、祐麒の頭の後ろに手を回す。 「えっと、その。……大丈夫だから」 「大丈夫って……安全日だったってこと?」 「……それは、分かんない。体温測り出したの、最近だから」 何だかよく分からないけど、大丈夫。 由乃さんは祐麒に抱き付きながら、そう繰り返す。それは祐麒を慰めてくれているんだと分かったから、予想外に健気な行動に胸が締め付けられる。 「とりあえず、応急措置はして置こうよ」 祐麒はそう言って由乃さんを横たえると、ティッシュを取った。まずは会陰部に滴る精液を拭き取って、それからピンク色の花びらを開く。 由乃さんは羞恥に耐えるように足を震わせていると、膣の入り口から白濁液が流れ出る。それと一緒にクリトリスの方を拭くと、由乃さんの足が閉じた。 「やっ……」 「いたっ」 思いっきり太ももで頭を挟まれ、脳全体に軽い衝撃。 「あ、……ごめん」 祐麒はそれに「いいから」と答えると、また足を開かせた。ドキドキしながら膣の入り口を見ると、処女膜らしき薄いひだに、指一本分ぐらいの丸い穴がある。そのひだに掛かっている精液を見る限り、この穴にむかって射精してしまったらしい。……ということは、事実的には膣内射精してしまったのと同じことだ。 膣内を弄る手に由乃さんが腰を震わせるたび、トロトロと精液が流れ出る。これに何て言ったらいいものかと考えていると、由乃さんが先に口を開いた。 「祐麒?」 「あ、……何?」 「その……。続きしないの?」 赤面した由乃さんの視線の先にあるのは、血管を浮き上がらせたペニス。一度の射精では勃起が収まらず、由乃さんの痴態を見ていたせいで、その硬さはほとんど失われていない。 「い、いいの……?」 「だって、まだ終わってないんでしょ?」 ということは、由乃さんは最後までする覚悟をしてきたということか。 それが無性に嬉しくて、祐麒は顔をよせると由乃さんの唇を舌でこじ開けた。口内の深くまで舌を入れながら、由乃さんの胸の上にのっていた三つ編みをどける。 「由乃」 やがてキスを終えると、ペニスを由乃さんの入り口にあてがった。 「……いくよ」 由乃さんが無言で頷いたから、ゆっくりと腰を沈める。亀頭が処女膜で阻まれる感覚がして、そこで止まってしまう。 「っ……」 由乃さんの表情をみると、緊張の表情。痛がっている様子はないから、まだ大丈夫なんだろう。 「……祐麒。手、握って」 「うん……」 左手で身体を支え、右手は由乃さんの手を握る。ゆっくりと、指を絡ませる。 祐麒はなるべくゆっくりと、腰を前へと進めた。亀頭の当たっていた処女膜に向かって、肉棒を挿入していく。 「あっ……! 痛、い……」 「大丈夫?」 「う……ん。いいから、続けて……っ」 左手でいたわるように優しく三つ編みの付け根を撫で、腰を落としていく。 やがて押し開いていくような、裂いていくような感覚。その最中、由乃さんは固く目を瞑っていた。 「ひっ、あぁ……!」 喘ぎと痛さの混じった声とともに、祐麒の右手が強く握られる。いつの間にか背中に回されていた由乃さんの右手が、グイと肩甲骨あたりに食い込む。 その痛みは、今由乃さんの感じている痛みに比べれば軽いものなんだと思う。だからこんなの、何てことはない。 そのままでペニスを挿入していくと、奥に突き当る感覚がして止まる。やっと全部入ったんだと思うと、身体が喜びに震えた。 「由乃……」 左の腕をたたんで、右手と同じように由乃さんの手を握る。そのまま覆いかぶさると、また由乃さんの手が強く握られた。 「やっと、できた」 由乃さんは少しだけ痛そうな顔で、柔らかく微笑んだ。 それがどうしようもないぐらい愛しくて、首に手を回してぎゅっと抱き締める。 「ダメ、まだ動いちゃやだ……」 抱き締めた拍子に、腰が動いてしまう。由乃さんの言葉に頷くと、祐麒はなるべく腰を動かさないようにして唇を求めた。これで少しでも痛みが紛らわせればいいと、激しく口内を蹂躙する。 由乃さんの膣内は、熱い。一人でする時では絶対に味わえない、予想外の快楽とその熱さは、これがセックスなんだと教えてくれる。 少しだけ荒い呼吸とともに、膣内のひだが蠢く。緩やかな快感にペニスは脈打ち、早く悦楽を貪らせろと叫んだ。 「……ん。もう大丈夫」 暫く抱き合っていると、由乃さんの呼吸が落ち着いてくる。祐麒は一度だけ啄ばむようにキスをして、身を起こした。 結合部を見れば、肉棒の殆どが由乃さんの中に収まっている。すこし腰を突き出せば、「もうこれ以上奥はない」と子宮口が押し返してくる。 「動いてもいい?」 「……うん」 緩慢な動作で腰をひくと、ひだが絡みついてくるのが分かる。まるで精液を搾り取るように、ギュウギュウと締め付けてくる。 由乃さんの膣は、祐麒のペニスに対して狭い。自分でする時ですらこんなに強くは握らないというのに、容赦なく快楽を与えてくる。 「あっ、やっぱりダメ」 突然由乃さんの手が背中に回り、力が込められる。それに祐麒は腰の動きを止めると、由乃さんの瞳を覗き込んだ。 「まだ痛い?」 「……違うの。想像していたよりは痛くないんだけど、……何だか怖い」 揺れる瞳と、震える身体。それが迷子の子猫を連想させて、どうしようもない保護欲に駆られる。 「大丈夫だから。リラックスして」 ね、と笑い掛けると、由乃さんも少しだけ笑みをこぼした。 可愛らしい笑顔。きっと誰より、綺麗な笑顔。端整な顔立ちが描くその笑顔が、祐麒はどんな笑顔より好きだった。 「もう、いいよ。好きに動いて」 それに祐麒は無言で頷くと、引いたままだった腰を突き入れた。ペニス全体が再び温かさに包まれ、またありえないぐらいの快楽が奔る。 さっき出した精液と愛液のお陰か、膣内のぬめりは十分だった。想像も出来ない数のひだが亀頭とカリ首を撫で、肉棒全体に刺激を与えてくる。最奥まで届いたところで、またペニスがピクピクと震えた。 「あっ、んぅ、はぁっ……」 まずいな、と思う。 由乃さんの膣内は、まったく容赦なくペニスを攻め立ててくる。二回目だというのに、早くも射精の兆しが見えてきていた。 「きゃふっ、んっ、……あぁっ」 由乃さんの喘ぎ声が、脳髄を焦がす。腰を振るたび微かに揺れる乳房が、視界を通して快楽を与えてくる。 本当にゆっくりと動いているのに、途轍もなく気持ちいい。快楽を伝える神経が焼ききれてしまいそうなほど、その感覚は強烈だった。 「はぁっ。……も、もっと激しくしても大丈夫、よ?」 熱い眼差しが、祐麒を射抜く。それですら興奮の材料になって、どんどんと高みに昇って行く。 「由乃も、気持ちいい?」 「あ、んっ……。まだちょっと痛いけど、気持ち、いいよ……っ」 祐麒が腰を振るのに合わせて、由乃さんの言葉が切られる。由乃さんの表情に苦悶の色はほとんどなかったから、その言葉は信じてもよさそうだ。 もっと、もっと。 快楽を求める衝動が大きくなり、自然とピストン運動の速さが増してくる。いつの間にかストロークが大きくなり、パンパンと音を立てていた。 「はっ、はっ……」 軽い息切れとともに、尚も腰を振る。このままじゃ果ててしまうと思って、祐麒は由乃さんの唇を貪るために身体を倒す。 しっかりと抱き合いながら深いキスを味わい、だけど腰はぐるりと円を描くように動かしながら、由乃さんの全てを感じ取ろうとする。 「祐麒っ、あ、はぁっ、ゆう、き……っ」 再び由乃さんの両脇に手をついて腰を振り出すと、頭が白くなってくる。――限界が、近い。 込みあがってくる射精感を分かっていながらも、腰の動きが止められなかった。快楽を食らい尽くそうとする獣のように、首筋に舌を這わしたまま突き続ける。 「もう、出そうっ……」 正常位のまま、祐麒はラストスパートと言わんばかりに激しく腰を振った。 もっと優しくしなくちゃとは分かっているのに、もう止められない。パンパンと音を立てるたび、射精を堪え切れなくなっていく――。 「いい、よ……っ。あっ、んっ、ひぁ、ああっ」 「うあっ、出るっ……!」 頭が真っ白になる寸前に、ペニスを膣内から引き抜いた。 びゅくん、びゅくぅ、と、激しく射精する。吐き出された白濁液は由乃さんの肌を汚していき、ヘソのあたりに精液の海を作っていく。 一回目より、遥かに長い射精。ビクンビクンと粘っこい精液を射出するたび、信じられないぐらいの快楽が押し寄せてくる。やがてその長い射精は、肉棒の先端から垂れた精液が由乃さんの恥毛に落ちたところで、ようやく終わりを告げた。 由乃はビュンビュンと飛んでくる精液を見ながら、ぼんやりとした頭でこれが射精なんだなと理解した。 「う、あぁっ」 祐麒君は女の子みたいに喘ぎながら、由乃の身体に精液を吐き出していく。勢いよく飛んだ白い粘着質の液体は、お腹の辺りまで達している。 由乃は祐麒君の射精を見ながら、やがて意識がはっきりしていくのを感じた。思いのほか精液は熱いんだと、そう認識する。 「気持ち、よかった?」 祐麒君の男性器から最後の一滴が垂れ落ちたところで、由乃はそう訊いた。気が付いたら、おへその辺りで精液が溜まっている。 「凄く、よかったよ。……でも」 ふと、祐麒君の表情に翳りが差す。それで由乃は、祐麒君が何を言おうとしているか、分かってしまった。 「ごめんっ。俺、全然優しくできな――」 次々と出てきそうな懺悔の言葉を、人差し指を唇に置くことで制する。今由乃が欲しいのは、そんな言葉じゃない。 「キスしてくれたら、許してあげる」 「……うん。ごめん」 祐麒君が覆いかぶさると、優しく唇が落ちてくる。 確かに最後の方は優しくなかったし、痛かった。途中で怖くなったし、今だって鋭さを少なくした痛みがある。 それでも、責めるつもりはなかった。それは覚悟していたことで、由乃が望んだことでもあったのだから、責める道理なんてない。 「……っ。ダメ、もっと長く」 十秒もしないうちに唇を離してしまったから、それじゃダメだと祐麒君の頭を引き寄せる。何故だか今は、人肌が恋しくて仕方ない。 やがて唇を触れ合わせるだけのキスから、舌で遊び合うキスに代わる。その動きに合わせるように、硬さを失った祐麒君のがあそこに当たってこそばゆい。 「っ……と。じっとしててね」 たっぷりキスを味わった後、祐麒君は身を起こしてティッシュを取る。由乃の身体に浴びせられたままだった精液を拭いていくと、次に祐麒君の性器を拭いた。 すると祐麒君は何を思ったのか、今度は由乃の足を広げる。そしておもむろに、新しいティッシュで膣の入り口を拭きだした。 「やっ、ちょっとっ」 「じっとしてて、ってば。さっき出したのが、垂れてきてるから」 さっき出したの、とは、挿入前に出してしまった精液のことだろうか。 それなら仕方ないかと思って、顔を真っ赤にしてじっとしていると、今度はお尻の穴の方まで拭きだした。 「ちょ、ちょっと、祐麒っ」 「しょ、しょうがないじゃんか。血が垂れていってたんだから」 だからって、そんなところまで。そう文句を言い出しそうになる口をつむぐ。考えて見れば、シーツに血が付いているのは後々恥ずかしい。 「……終わったよ」 祐麒君はそう言うと、ティッシュをゴミ箱に捨てて由乃の隣に寝転がった。相変わらず、身体が温もりを求めている。今更なにも恥ずかしがることなんてないか、と思った由乃は、祐麒君の首に抱き着くと胸板を摺り合わせるように覆いかぶさった。 「どうしたの?」 「ううん、別に」 裸で寄り添っていることが恥ずかしくて、それでも少し嬉しくて、何となく頬っぺたにキスをした。祐麒君はくすぐったそうに、由乃の背中を撫でる。 そこで不意に由乃は、情事の最中に考えてしまったことを思い出した。 「……ね。祐麒って慣れてるみたいだったけど、まさか他に誰かとしたことあるの?」 「何言ってんのさ。初めてだよ。由乃が初めて」 「……そっか」 その言葉に、安心する。祐麒君が他の女の子のキスするのなんて、考えるだけで嫌だった。独占欲丸出しと言われようが、本当にそう思う。 「私は、祐麒のモノだよね?」 「え……? う、うん」 「そして祐麒は、私のモノだよね」 「うん。そうだよ」 そう、それでいい。即答してくれたのが嬉しくて、由乃は祐麒君の頬と自分の頬を擦り合わせる。そんな原始的な愛情表現が、今の由乃には必要なんだと思った。 それから暫く布団もかぶらずにゴロゴロしていると、ふと違和感に気付いた。由乃の太ももにあたる、筋肉のようにしなやかな硬さ。 何となく分かってはいるけど確かめずにはいられなくて、由乃は身体を持ち上げて祐麒君の下半身を見る。……そこには案の定、立ち上がった祐麒君の棒があった。 「……祐麒のえっち」 「よ、由乃が胸を押し付けてくるからだよ」 由乃は少しだけ呆れて、でも照れる祐麒君が可愛くて笑う。 考えてみれば、無意識に足が触れてしまっていたから、それが刺激になっていたのかも知れない。そうすると由乃のせい、というのも否定できないのだけど、それだと少し厄介だ。 まだ、疼くように軽い痛みがある。……はっきり言って、二回目は厳しい。 「えっと」 けどこういう時、由乃はどうしたらいいのだろう。ちゃんと無理と言うべきか、それともちょっとぐらい我慢してしちゃうのか。 どちらも考えようによっては正解で、祐麒君のことを考えれば後者の方が正解。ああ、――思っていたより、答えが出るのは早かった。 「その、……いいよ。もう一回しても」 由乃は出来るだけ可愛らしく笑って、祐麒君の手を握った。きっと、笑い返してくれると思って。 「……ありがとう」 由乃が望んだ通り、祐麒君は笑ってくれる。だけど表情はすぐ崩れて、それをかき消すように祐麒君は小さくかぶりを振った。 「でも、いいや」 「えっ……?」 「まだ痛いでしょ? 無理しなくていいから、今日はもう寝よう」 そう言うと祐麒君は掛け布団を持ってこようとしたから、由乃は慌ててそれを止めた。こっちは覚悟を決めたっていうのに、それはないんじゃないのか。 「由乃?」 別に由乃の方がもう一回したい、というわけじゃない。だけど祐麒君のがあんな状態じゃ、気になって眠れないではないか。 思えば「愛しあう」とか言いながら、由乃はひたすら受身だった。いわゆる『マグロ』というやつ。それってどうだかなぁ、と思うのだ。 「待ってよ」 男性を満足させる方法、と言うと少し卑猥な感じがするけど、由乃だってそれぐらいは知っている。剣客小説じゃ、よく性交の描写が出てくるし。 しかし、それが出来るのかと自分に問いかける。いや、出来るかどうかというより、嫌か嫌じゃないかという問題。 「その、……舐めてあげるから」 ――大丈夫。多分、できる。 さっきまで一緒にお風呂に入っていたんだから、そこが清潔であることは分かっているし、祐麒君の一部だと思えばきっと大丈夫。 「え? どこを?」 しかし祐麒君は、由乃が覚悟を決めているというのにすっとぼける。わざとではないようだけど、それを言わせるのか。由乃に。 「ど、どこって」 そこでしょ、と由乃は祐麒君の股間を指差した。キノコの親戚みたいなそれが、今も張りつめて揺れている。 「え……。できるの?」 「で、できるってば」 だから、一々訊くなって言うの。 由乃はゴクリと唾を飲み込んで、祐麒君の股間に顔を近づけた。 祐麒はためらいがちに添えられた由乃さんの手を見て、本気なんだと認識した。 本当に、フェラチオをしてくれると。由乃さんはそう言っているのだ。 「えっと……」 由乃さんの白くて小さな手が、祐麒の肉棒を握っている。それだけで、興奮するには十分だ。 祐麒はドキドキしながら、由乃さんの次の行動を待つ。できると言ったからには、どうするか知っているはずだだろう。 しかし由乃さんは口に含む前に、一度だけペニスを握った手を動かした。尿道に残っていた精液が、プクッと鈴口から溢れ出す。 「……これって、射精が続いてるってこと?」 指で亀頭の先の精液を摘んだ由乃さんの質問は可愛らしくて、いやらしい。そのままネバネバと精液を弄ぶ指は、無邪気が故に淫靡だった。 「違うよ。残っていただけ」 祐麒は寝転んだまま、両足の間で正座している由乃さんに向かって言った。 当たり前だけど、緊張する。もろに性器を見られているというだけで十分だというのに、ペニスを握られたままなのだから。 「そ、それじゃ、するからね?」 「うん。……お願い」 もとから肉棒に近づけられていた由乃さんの顔が、さらに降りてくる。由乃さんの三つ編みが太ももを撫でて、ぞくりとすると同時にペニスがひくつく。 由乃さんは両手をペニスにそえると、緊張した面持ちでそれを見詰める。そして覚悟を決めたように、更に頭が下がっていく。 「ん……」 猫がミルクを舐めるように、舌がチロリと祐麒の亀頭を舐める。その仕草が予想外に可愛くて、悦楽が背筋を走った。 由乃さんは尚もチロチロと亀頭を舐めながら、上目遣いで祐麒の方を見る。目で「気持ちいい?」と訊いてくる。 「いいよ、由乃」 言いながら頭を撫でると、由乃さんは目だけで笑う。そして舌の動きを止めると、ピンク色の唇がゆっくりと祐麒のペニスを咥え込んだ。 「うぁっ」 思わず、腰が引ける。もう二度も放っているというのに、興奮のせいか感度が落ちない。 由乃さんの口内は温かかった。自慰では得られないその感触に、肉棒は悦びに震える。 「んっ、……はぁ、んっ」 やがて由乃さんは、唇でペニスを挟み込んだまた頭を上下させた。膣ほどは激しくない、ゆったりとした快楽が広がる。 フェラチオというのは、多分に精神的悦楽だ。女の子にペニスを咥え込ませ、愛撫してもらうという愉悦。その相手が由乃さんなのだから、もう暴れ出したいほどに興奮する。 リリアンに通う生粋のお嬢さまで、清純派の美少女。その彼女が可愛らしい唇と舌で奉仕しているという現状に、アドレナリンは垂れ流しになっていた。 「ねえ、どうした方が気持ちいい?」 由乃さんは一旦フェラチオを止めると、祐麒に向かってそう訊ねる。 「そうだな……。アイスクリームを舐めるみたいに」 「私、アイスクリームだと齧っちゃうんだけど」 「あ、……じゃあ飴を舐める感じかな。ほら、この赤くなってる部分を飴玉だと思って」 「……うん」 祐麒が亀頭を指差して言うと、由乃さんはそれを口に含む。先端がすっかり咥え込まれると、ねっとりとザラついた舌が絡む。 「あっ……! い、いいよ。続けて」 ペニスを舐め回す舌からくる刺激は強烈で、亀頭だけに加わる快楽として膣以上なのではないかと思う。温かい、というだけで気持ちいいのに、この刺激は想像以上に祐麒を攻め立てた。 「手も、動かして」 でも流石に三回目ということもあって、射精はまだ遠い。由乃さんの手がペニスをしごき始めると、更に快感が募っていく。 由乃さんの頭が動くたび、チュパチュパといやらしい水音が立った。はぁ、と時折吐かれる息が陰毛に当たって、それすらも快楽に代わる。 「……いいよ、その調子」 しばらくフェラチオの快感を味わっていると、ゆっくりと射精へ近づいて行っているのが分かる。想像以上に、由乃さんの奉仕は気持ちいい。 その快楽に耐え切れなくなって、思わず身を起こす。すると由乃さんは、何を思ったかペニスをしごきながら祐麒の胸板に顔を近づけた。 「由乃?」 そしてどうしたことか、由乃さんは祐麒の乳首を舐め出す。くすぐったい感触が、じわりと広がる。 「気持ちいい?」 悪戯っぽい笑みを浮かべながら、由乃さんはそう尋ねる。 (ああ、そうか) 一体何故、と思ったけど、よくよく考えてみれば分かる気がした。由乃さんは乳首を舐められて気持ちよかったから、祐麒も同等に気持ちいいはずと思っているのだろう。 事実として、その行為は純粋に気持ちよかった。猫みたいにじゃれついてくるのが、言いようもなく心地よい。 「由乃」 名前を読んで顔を引き寄せると、激しく唇を求める。肉棒を弄ばれながら、ひたすらに口内を蹂躙しあう。 きっと傍から見れば、もの凄くいやらしい構図なのだろう。その状況に更に高まってきて、ペニスが更に硬くなる。 「その、……次はここ舐めてくれる?」 こうなると、とことん快楽を突き詰めたくなる。 祐麒は「ここ」と言いながら裏筋を指差すと、由乃さんはキョトンとした目をした。 「う、うん……」 それでも由乃さんは希望に応えてくれて、肉棒に舌を這わせる。カリ首のところまで舌が上がってくると亀頭を口に含み、ねっとりと愛撫した後にまた裏筋を辿っていく。 「うぁ、いい、よ……」 息も絶え絶えにそう言うと、由乃さんは子悪魔的な笑みを浮かべる。きっと感じている祐麒の姿をみて、余裕が出てきたのだろう。 もはや気分は、いつも通りの青信号か。由乃さんはフェラチオに慣れてきたようで、様々な舌の動きを見せては射精に導いていく。 「ここが気持ちいいんだ」 由乃さんはそういうと、三つ編みの先で裏筋を撫でた。ほとんど何も知らないからこそ出てくるその行動が、脳髄を痺れさせるほどいやらしい。カリ首までそれで攻められると、急速に射精感が高まる。 「もう、出ちゃうかも」 由乃さんの舌がぐるりとカリ首を這い、小さな手は容赦なくペニスをしごき立てる。 由乃さんはそれに何も言わず、手の動きを早めた。拙く、それでも一生懸命な手コキは、射精に向けてのカウントダウンを始めさせる。 「由乃っ、もう、本当に……っ」 「んっ、んぅ……。いいよ、出して」 再び肉棒が咥え込まれると、舌の動きが速くなった。もう射精を堪え切れないというところになってもまだ、激しい快楽を与えてくる。 ――もう、限界。 祐麒はそれを自覚すると同時に、尿道に力を入れる。少しでも長く、この快楽を味わっていたかった。 「由乃……由乃、出るっ……!」 由乃さんの口の中で、ドクンドクンと射精する。それに驚いたのか、由乃さんは瞬時に顔を引いてしまった。 「うぁ、あっ」 尚も止まない射精。ぴゅくっ、どぴゅっと精液が飛んでは、由乃さんの端整な顔を汚していく。 二回目と変わらず、粘っこい白濁液。柔らかな唇に、火照った頬に、濃い色の睫にと精液がかかり、顔で受け切れなかったものがシーツへと垂れていく。 「ご、ごめん……」 最後にびゅくんと唇に精液を吐き出し、ようやく射精が終わる。本当に三回目なのかと疑いたくなるほど大量の白濁液が、由乃さんの顔に降りかかっていた。 「んー?」 由乃さんは口の中に出された精液を祐麒に見せると、「どうすればいいの」と視線で訊く。 「飲まなくていいから、出して」 そう言うと由乃さんは、祐麒がティッシュを出す前に手を精液を落とした。ピンク色の下唇を伝って、トロトロと白濁液が流れ落ちていく。 (いやらしすぎる……) そう思いながら、祐麒は由乃さんの顔に飛び散った精液を拭っていく。たっぷり四枚ほどのティッシュを使って拭き終えると、シーツに垂れた分まで拭った。 「……ごめん、顔に出しちゃって」 「ううん、自分のせいだから」 頭を撫でながら言うと、由乃さんは目を細めて微笑む。彼女が性について寛大で、本当によかったと思う。 「……口ゆすいでくるね」 由乃さんはそう言って、流しの方に歩いていく。その後ろ姿を見送った後、祐麒は「はぁ」と息を吐いた。 終わった。初めてのセックスは、何とか無事に。……いや、膣内射精は無事とは言えないけど。 「あー。流石に眠くなってきちゃった」 由乃さんは流しから戻ると、三つ編みを解く。ヌードに長い髪がさらり、という状況に、まるで女神みたいだと思った。 そのまま布団に潜り込んでくるのを確認すると、祐麒は掛け布団を掛ける。すっぽりと身体が覆い隠されると、由乃さんが抱き着いてくる。 「……ねえ、キス」 「……うん。おいで」 艶然とした笑みにねだられ、祐麒は由乃さんの唇を受け入れる。軽く押し当てるだけのキスを何度も繰り返し、その度に髪を梳く。 「今日の由乃は、甘えん坊だね」 「そう? でも今は、すっごく甘えたい気分だから」 由乃さんは祐麒の肩口に頬を寄せると、「うーん」と唸る。さっきも言っていたように、眠いのだろう。 「服着て寝ないと、風邪引くよ」 「いいの。祐麒にくっついて寝れば温かいもん」 ふふと笑って、由乃さんは祐麒の身体に絡みつく。それにクるものがあったことは確かだけど、これ以上は祐麒も由乃さんも無理だろう。 祐麒が撫でるように由乃さんの髪を梳いていると、自然と目蓋が降りてくる。呼吸が深く、静かになっていく。 「ねえ、祐麒」 「うん?」 「私たち、ちゃんと愛しあえたよね?」 由乃さんは眠そうな目で、祐麒に問いかける。それが可愛らしくて、また啄ばむようにキスをした。 「うん。きっと、ちゃんと」 「じゃあ、愛してるって言って」 「……今更?」 「いいから、言って」 真面目に請われると、祐麒はひとたまりもない。恥ずかしいな、とは思いつつも、祐麒は由乃さんの額にキスしてから言った。 「愛してるよ。誰より、由乃だけ」 「……うん。私も」 由乃さんの声は、今にも消えてしまいそうなほど儚げで弱い。 ――愛してる。 唇だけそう喋って、声が寝息に変わる。それを聞き届けると、祐麒はゆっくりと目を瞑った。 絶対になくしてはいけない温もりを。絶対に失うものかと、抱き締めながら。
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