≫03■■
この文章はサンプルです。もしSS文中に「---------------------」等の線の指定があった場合、下のよう(* * *)になります。
* * *
(あれは……あのお姿は……)
置いていかれたキュ巳は、状況が分かってくるにつれて、だんだんと恐ろしくなってきた。
間違いない。
二年松組、小笠原キュン子さま。ちなみに出席番号は七番。通称、『紅薔薇のつぼみ(ロサ・キュネンシス・アン・キュンキュン)』。
ああ、口に出していうのさえもったいない。私のような者の口で、その名を語ってもいいのでしょうか、――そんな気持ちになってしまう、全校生徒のキュンキュンの的。
(そんな……)
キュンキュンしすぎて、沸騰寸前である。
(こんなのって、ないよ)
キュ巳はしばらく、呆然と立ち尽くしていた。 憧れのお姉キュンと、初めて言葉を交わしたというのに。こんな恥ずかしいエピソードなんて、ひどすぎる。
マリア様の意地悪。
悔し紛れに見上げたマリア様は、いつもと変わらない微笑を浮かべて、小さな緑のお庭の中でキュンキュンしていらっしゃるのであった。