■ マジ狩る☆由乃 第三話『どこへ向かってゆく暴走さすらいのヒロイン』 ※この作品は壊れ系ギャグです。読まれるさいは十分にお気をつけ下さい。
またこの話は『炎の魔女がマイブーム』の続編となっております。 何か、生きるのが嫌になってくることってくるこってありませんか? 今の私がまさにそうです。 「……ねえ、サンペイ。この前の私のアレはまだこないの?」 「いや、やっぱ最高やな!」 「ちょっと、あんた。マンガなんて読んでないで話し聞きなさいよ! ていうかあんた、何読んでんのよ」 「いやな、この「少年A」でやってる「KKKへようこそ」が今ええとこなんや」 KKKって確か、アレか? 白いのが好きな人たちのことか? 「「KKKへようこそ」って、確かうたい文句の「白いのっていーいなー ホワイト&ホワイト!」で問題になった、アレ?」 由乃がそう言うと、サンペイはニヤリとしていた。 「せや。特に今月は、KKKリーダーであるホーゲンが演説で「みなさん、白人ですかー!!」と叫んでメンバーから「白人でーす!!」と返ってくる場面なんか最高やで! まさにクライマックス突入ってやつや!」 「……どちらかというと、何か違うのが突入してくんじゃないの? 催涙弾とか、閃光弾とかが飛んできたあと、SWATとかいうのが「みなさん、突入ですかー!!」「突入でーす!!」とか言いながら銃を乱射してきて。まあ、ある意味クライマックスってのは間違ってないと思うけど」 ていうか、そんなことはどうでもいい。本当にどうでもいい。 由乃は本題に戻すことにした。 「で、もう一回聞くけど、アレはまだこないの?」 「アレって、なんや?」 「アレに決まってるでしょ! あんたのいう、セレブな人たちの投票結果よ!」 つー 由乃は、サンペイの頬に「つー」と落ちている一筋の何かを見逃さなかった。 「あ……うん、あれやな。まあそう慌てんなや。ちょっと立て込んでるやろ。あ、たぶんアレや。白ヤギさんが食べたんやろ」 「ふーん、白ヤギさんたら、読まずに食べたわけあるかぁぁー!!!」 「いや、まあ、落ち着きなはれ」 「あ、あんたまさか忘れてたんじゃあないでしょうね!?」 由乃がサンペイを問い詰めるが、サンペイは平然とした表情を浮かべている。 「なに、安心せい。ちゃんと申請はしとるで」 「じゃ、じゃあ、ただ遅れてるだけなの?」 「いや、マジカル切手代が足りんで返ってきとるけど。うーん、いけるかと思ったけど、あかんかったわ」 「ふっ、ふざけんなぁぁぁー!!! はよ、送りなおさんかいぃぃ!!!」 「ああ、今日にも申請しとくんで。せやな、一週間もすればくるで」 一週間、それは短いように聞こえるが、後の由乃にとって「火の七日間」と呼ばれる地獄のような日々の幕開けの始まりだった。 マジ狩る☆由乃 第三話 「どこへ向かってゆく暴走さすらいのヒロイン」 「いい、絶対にわたしのやつ申請しときなさいよ」 「ああ、よしのんの絶対申請しとくから。安心せいや」 「ええ、その言葉を信じるとするわ」 由乃がとりあえず安心していると、マジ狩るの水晶が輝いてきた。 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「よしのん真性☆安心?」 「おまえ、わざとだろぉぉ!! 絶対わざとだろぉぉ!!! つぶすぞこらぁぁ!!!」 「まあまあ、かまってほしいんやろ。甘えん坊やからな」 「甘えすぎじゃあ!! もっと世の中の厳しさを教えんかい!!」 くっ、まあいい。来てないものや、このトンデモステッキの言うことなど気にしてもしょうがない。由乃は気を取り直し、街に「萌え」を稼ぎに出かけるとする。 が、外にでようとした矢先、サンペイが意外な事を言ってきた。 「おっ、せや、すんまんけど、わしは今日は遠慮させてもらうで」 その声に、由乃の動きがピタと止まる。 「なによ、サンペイ。あなたはこないの?」 「ん、今日は「獣戦鬼エルムガイ」がある日やからな」 「エルムガイって、OPの歌が問題視されたアレ? 確か「誰か爪を研がしてくれ 切れがないと寂しすぎるから」っていう部分が……ええと、ノリが悪いから、だったかしら?」 「そうなんか? ノリはええと思うんやけどなー? 特に最後の「いま いま 爪を研いで エルムガイィィィー!」て奇声を上げるとこなんか、もう主人公の気持がこれでもかって伝わってくるで」 「……キチにはキチの気持が分かるってことかしらね」 別にこいつが来なくても、いや、むしろいないほうがいい。 由乃は今ままでの経験上、そう判断することにした。 「ふん、それじゃあ行ってくるわね」 「がんばりやー。期待してへんけど」 ぷち その言葉に思わず口から火を吹きそうになったが、これ以上セレブな人たちに素敵な印象を与えないためにも何とか耐えた。 (ふん、覚えときなさい! 晴れて自由の身になったら真っ先に狩ってあげるわ!!) (とはいっても、なかなか事件なんて起こらないものねー はあ) だが、せっかくやる気を出して街に出てきたものの、ここまでは何事もなくその日のパトロールは何の収穫もなかった。 (せっかくこの私がヤル気を出してるって言うのに、どういうことなのよ!! まったく、神さまってのは努力しているものの味方なんじゃないの!!) だが、残念ながら「口から炎」を吐いたり「目からビーム」を出すというのは、世の中のいう「努力」にあたらないらしい。 (ふん、まあいいわ。次こそはマジ狩るってやるのだから!!) ただ、無駄に疲労を重ねた由乃は今回はあきらめとぼとぼと帰宅の路につこうとした。 が、意外なところでマリアさまは由乃のいう怒力、もとい努力見てくださったのか、あるものが由乃の視線に入ってきた。 (あれ、あの子、どうしたんだろ?) 由乃の視線の先には、公園のブランコで5歳くらいの男の子が泣いていたいるのが見えた。 「どうしたの、ボク」 由乃がそう声をかけると、男の子はびくっとした様に体を震わせて顔を右手でごしごしとこすった後、怒ったような顔をして由乃の方を見上げてきた。 「なっ、なんだよ、べっ、別に泣いてなんかないぞ」 きゅん その真っ赤な目をした顔を隠そうともせずそう言う男の子を見て、由乃の心は軽くときめいてしまった。 (かっ、かわいい。……なんか令ちゃんが嵌ってしまうのも分かるような気がする) さらりと令の人格を否定した後、改めて由乃はその子に声をかけた。 「ねえ、どうかしたの、ボク?」 「……会いたい人がいるんだ」 「その人は、今どこにいるの」 「ちょっと前にいなくなった。もう、2度と会えないんだって」 「……そう」 いなくなった、2度と会えない、死別なのかそうでないのか分からないけど、大事なのは、大切な人と会えなくなった、ということだろう。 (ひょっとして、これってチャンス!?) 思わず本音を漏らしそうになるが、これは間違いなくチャンスなのではないだろうか? 嘆き悲しんでいる小さい子が由乃の魔法によって笑顔を取り戻す、これこそまさに王道というもの。 (こっ、これよ、私が求めていたのはこれなのよ!!) 由乃が降って沸いたチャンスに胸を躍らしていると、その子は再び怒ったような顔をしてぷいと顔を横に向けた。 「べっ、別にさびしくなんかないぞ」 その明らかに無理している様子を見て、由乃は先ほどとは違った胸の鼓動を覚えた。 (会いたいんだよね。無理も無い、か。だって、まだ子供なんだし) 「ねえ、ボク」 「ボクじゃないよ、ちゃんとまなぶっていうなまえがあるんだぞ」 「じゃあ、まなぶくん。もしも、だけど、その人に会えるっていったらどうする?」 「べっ、別にどうもしない。…けど」 「けど?」 「ま、まあ、会ってやってもいいかな」 「そう、会いたいのね」 「むっ、むこうが会いたいのならだよ」 そのふて腐れた様子に苦笑した由乃はその子の両手を自分の右手で優しく包み込んだ。 「なっ、なにすんだよ」 「いいから、ねえ、その会いたい人を頭の中で考えてもらえないかな?」 「えっ、会いたい人の?」 「ええ、そうすれば願いは叶うかもしれないよ」 「本当に、会えるの?」 「うん。だって、お姉ちゃんマジ・・ううん、魔法使いなんだもん」 由乃が笑いながらそういったら、その子は由乃の方を不思議そうに見つめてきた後、小さくうなずいて一言。 「おねえさん、かわいそうな人?」 びきっ! 「……ううん、違うわ。あのね、まなぶくん。あんまり変なこと言ったら……マジ狩るわよ。いい、わかった」 「う、うん!」 どうやら由乃の心のこもった言葉が通じたのか、まなぶくんは何度もその首をこくこくとさせていた。こんな小さな子でも、なにかが働いたのだろう。虫の知らせとか。 まなぶくんが由乃の圧力に負け、いや、由乃の真摯な気持ちが通じたのか目を閉じてきた。 ぎゅっ その子の握力が強くなるのがわかった。 それはまるで力が強ければ強いほど願いは叶うんだ、と思っているかのように。 その様子を優しく見つめた後、今度は自分の左手に握られたステッキに目をやる。 正直、この子にあのようなことを言ったのは勝算があったわけじゃない。ただ、魔法はイメージ、つまり想いを具現化するということから、いけるかも、と思っただけ。 (魔法は、イメージ、つまり、想い、だよね) この子は願う。大切な人に会いたいと言うことを。そして、由乃は願う。この子の願いを叶えたい、と。 (お願い、マジ狩る、力を貸して!) ぴかっ ぴかっ ぴかっ 次の瞬間、まばゆい光が由乃を包んだ。 そして、光が消えた後、由乃の目の前に呆けたような表情を浮かべている男の子がいた。まるで、信じられない、ってような。 (良かった。うまくいったみたいね) その子が震える声で口を開いた。 「あ、会いにきてくれたんだ! ダイジンオー!!」 ……はい?? ダ、ダイジンオー?? おそらく会いたいのは父親か母親といった家族を想像していた由乃にとって、そのあまりにも電波な名前は想定外だった。 (ず、ずいぶんと個性的な名前ね。それにしてもやたらと体が重いような。って?! ……なっ、なっ) 「ナンジャコリャァァ!! ッテ、コエオカシー!! ムチャオカシイシー!!」(※電子音声) 個性的なのは名前や声だけではなかった。やたらと体が重くなった感覚を受けた由乃が思わず自分の手を見てみると、それは明らかに人の手ではなかった。 いや、確かに手の平に五本の指が付いてるという人と同じ形をしてるのだが、問題なのはその材質だった。そのやたらときらきらと光るメタリックな光沢をした腕はまるで。 「ぼく、「ゴールドもうじゃダイジンオー」大好きだったんだ。ほら、ちゃんとおもちゃも大事に取っているよ!」 そう、その姿はまるで学くんの手に握られている超合金ロボにそっくりだった。 まなぶ君が、由乃ことダイジンオーに何かをせがむように喋ってくる。 「ほら、ダイジンオー、あれやってよ!」 「ア、アレ?」 「うん! おかねが空からおちてきて、てきがひろっているときにぶっとばす「ひだりうちわスパーク」とか、うまい話をもちかけててきをゆだんさせてからぶっとばす「だんごうパンチ」とか、とどめをさすときにつかう「あまくだりスラッシュ」とか!」 「ナ、ナニソレ?」 「なにって、いつもやってるじゃないか! ほら「うはははは、このかねのもうじゃめ」ってわらいながら」 つまり、いわゆる必殺技、というものだろうか? ポーズをつけてそれらしいことを叫んだらきっと満足してくれるだろう。それに今回はポーズをとっても何も起こることはないだろうし。 「ヨーシ、マナブクンノタメニモガンバッチャウゾ」 「うん!」 由乃ことダイジンオーは自分の右手にある「金」と書かれたうちわを天にかざして大きく振り下ろした。 「ウハハハハハ、コノカネノモウジャメ。クラエ、ヒダリウチワスパァァーク!!」 すると、「何か」が起こった。 ぴかっ!! ずばばばばばば!!! どーん!! 「ウッキャァァァー!!!」 ダイジンオーが団扇を振り下ろしたとき、怪しげな光が団扇から放たれその光は真っ直ぐに突き進み公園の遊具の一つであるシーソーを粉々に粉砕していた。 「すごーい! びっくりした! さすがダイジンオー!」 ダイジンオーもビックリした。ものすごくビックリした。 「チョ、マジカル、ア、アンタノシワザナノ?」 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「な椅子☆えんしゅつ えっへん」 「エッヘン、ジャネエェェェー!!」 ダイジンオーがマジ狩るを問い詰めていると、悲しそうな声でまなぶくんが話しかけてきた。 「ねえ、どうしてまだ悪の秘密結社リクルトーを倒してなかったのに急におわっちゃったの? ぼくじかいの「きおくにございません」ずっとたのしみにまってたんだよ」 「ウ、ウン、アルダンタイカラアツリョク、エエトジャマガハイッタンダ。デモ、ダイジョウブ。セイギハアルダンタイトカヲノゾケバドンナコトガアッテモマケナイカラ」 「うん、わかったダイジンオー! あっ、あのちょっとかわいそうなお姉さんにもよろしく言っといて!」 少しだけダイジンオーはピキッときたが、ここで暴れてしまっては萌えを稼ぐのが台無しになってしまうので何とか耐えながら、まなぶくんを少し引きつった笑顔(といっても元がメタリックなので見分けがつかないが)で見送っていた。 まなぶくんが見えなくなると、ダイジンオーはマジ狩るの方に目をやる。 (さて、と) 用もすんだことだし、こんなトンデモなものからはさっさとオサラバしよう。 ダイジンオーはそう思いながら、マジ狩るを持って元に戻れと、えいっ、とやった。だが、 しーん。 何も起こらなかった。 「ッテ、アレ、ドウシテモドンナイノヨ?」 えいっ。 もう一度やってみた。だが、やっぱり何も起こらなかった。 「モ、モウイイノヨ、マジカル? ワ、ワタシ、ハヤクモドリタイノダケド」 ぴかっ ぴかっ ぴかっ マジ狩るの水晶が光っている。ものすごーく嫌な予感がしながら水晶を覗いてみた。 その水晶文字を見たとき、ダイジンオーは凍りついた。 それにはこう書かれていた。 「ご麺☆ムリっ酢」 「チョッ、ナ、ナンデムリナノヨ!!」 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「だって MPが☆足りないよ」 「ナ、ナンデスト!!」 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「ごりようは計画適に☆ムリ竹刀でね!」 「チョッ、オ、オカシイジャナイ!ダッテワタシ、コンカイホトンドツカワナカッタワヨォォ!!」 ダイジンオーが納得できずにマジ狩るを問い詰めると、マジ狩るが再び輝いてきた。 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「殺気☆アレのせい」 「エ、サ、サッキ?? ナンノコト?」 さっき? ひょっとして知らずにそんなに使ってしまったのだろうか? ダイジンオーが怪訝にしていると。 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「ひだりうちわ☆スパーク!」 由乃の頭がスパークした。 「ふっ、ふざけんなぁぁぁー!!! あ、あれは、おんどれが勝手にやったんだろうがぁぁー!!! MP返せぇぇ!! わたしの人として無くしてしまったものを返せぇぇぇ!!!」(※ここからダイジンオーのセリフを読みづらいので普通に戻します、声はメタリックのままです。 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「ダイジョー奉☆しばらくしたら元にも$ヨ!」 「し、しばらくってどれくらいなのよ!!?」 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「あ↓☆…仮名?」 「↓ってなんだぁぁぁー!!! ど、どのつらさげて、明日学校にいけばいいのよぉぉ!!」 ここで、ダイジンオーの耳に公園の外から何か複数の物音が聞きこえてくる。 「お、お巡りさんこっちです。なにかさっきものすごい音がしたんです」 「分かりました、こっちですね」 !!!!!!! ダイジンオーは今、この状況を冷静に考えてみる。 公園に物凄い破砕音が聞こえたので現場に行ってみると遊具の一つでシーソーが完全に破壊されており、その真ん中に身長2メートルを超える怪しげにきらりんと光っているメタリックなロボが突っ立っている。この状況を端的に表すのにぴったりの言葉はおそらく、 「ぶっちぎりの非常識」 につきるだろう。 「じょ、冗談じゃないわよ!! も、もし警察に捕まったりしたら」 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「全裸一犯☆違法貧乳罪?」 「だれが脱ぐかぁぁぁー!!」 どたどたどた そうこうしてるうちにお巡りさんたちが、今のダイジンオーにとっては存在が相容れない方たちが公園に踏み込んできた。 「しっ、シーソーが!!」 「な、なんだ、完全に粉々じゃないか」 (しっ、しまったぁぁぁ!!!) 完全に逃げる(といってもどこに?)タイミングを失ったダイジンオーはやむなく、公園のオブジェとしてに立っていたペンギンさんの隣にオブジェの一つとして突っ立っている。 が、ずっと彼らが帰るまで待つだけでは辛いし怪しまれるかもしれない。できるだけ逃げる算段をしておこう。 ダイジンオーはちいさな声でマジ狩るに話し掛ける。 「マ、マジ狩る! 聞こえてる? なんとかこの人たちをこの場から引かせなさい! タイミングとかやり方は全部あんたにまかせるから。いい、元はと言えばあんたのせいなんだからね!!」 ぴ ぴ ぴ (小発光) 「奉☆らじゃー!」 激しく不安に襲われたが、オブジェのひとつになりきっているダイジンオーはもはやこのトンデモステッキに命運を託すしか他なかった。 ここで、通報者と思われる者が怪訝な顔を浮かべながらダイジンオーに近づいてきた。 「ん? こ、こんな怪しい奴、前からあったか?」 (わ、私はただのなんの変哲もないダイジンオーよ。あ、怪しくない! 全然、怪しくない!! だから、あっち行って!) 「どうかしましたか?」 「あ、いえ、お巡りさん。なんか変なものがあるので」 「変なもの? って、このロボット? ですかね? これ?」 「さあ、ただ、やたらリアルですが」 「ええ。で、この変なのがどうかしましたか?」 「いえ、こんな変なの前からあったかな? って思いましたんで」 「ふーむ、じゃあ、念のため調べてみますか」 (おっ、お願い、早く。マジ狩るなんとかして!) ダイジンオーの願は通じたのか。次の瞬間、彼らがダイジンオーにさらに近づこうとしたとき、彼らは思い切り引くことになる。 何故なら、 ビカーン!! とダイジンオーの両目が怪しく光ったから。 「うっ、うわああー! なっ、なんだ、こいつ!!」 「光った、目が光った!!」 引いた、そりゃあもうこれでもかってくらいに引いた。 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「轢☆いたよ!」 「コ、コラァ!! マジ狩るぅぅ!! 違うわ!! 引かせる意味が違わぁぁ!! 轢き殺したろかぁぁ!!」 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「みっしょん☆コンクリート!」 「う、海に沈めたろかぁぁ!! マジ狩るぞこらぁぁ!!!」 「うわああー!! 動くぞこいつ!!」 「ほっ、本部、こっ、こちら、2メートルを超える謎の超合金ロボと現場で遭遇!! しっ、至急応援を! あと、拳銃の発射許可をお願いします!!」 「ちょっ! 待っ!!」 ダイジンオーは何とか話し合いで解決しようと彼らの方に進み出た。が、しかし。 ぱきゅーん!! へ?? お巡りさんは何の迷いもなく、鈍く黒光りしている筒状の何かをダイジンオーの方に向けていた。 それから後は、死ぬほど大変だった。 わらわらと現れる警察を撒くために、途中何度もおもゃ屋のディスプレイに擬態して鎮座したり。敵前逃亡したケン・タッキー・サンダース軍曹(日系3世)の人形が目印のファーストフード店「ケン・タッキー・プライドチキン野郎」では、サンダース人形の横に違和感なく立っていたつもりだったが余裕でばれ。それで動揺したのか、気が付いたら2メートルはあるサンダース軍曹の人形を家まで持って帰ってしまった。 あ、全身指先までフル稼働のサンダース人形は、お人形好きな令ちゃんにあげた。 まさに、死ぬかと思った。……いやもう、いっそ殺して。うっうっ。 ちゅん ちゅん 次の日の朝。 ぱちっ(TVのスイッチON) 『…昨日、○○で謎の2メートルを超えるいわゆる特撮ヒーローのロボットが街中を爆走し、辺りの住民を恐怖に陥れるという怪事件がありました』 TV画面に映っているニュースを見ながら、サンペイが由乃に話し掛けてくる。(ちなみによしのんは元に戻ってます) 「よしのん、見てみい? なんかえらいニュースやっとるで」 「……」 「どうしたんな、元気ないやんけ?」 ぱちっ(チャンネルチェンジ) 『ええ、昨日の街を爆走したロボットは複数の目撃情報から諸事情の理由で途中打ち切りとなった「ゴールドモウジャ ダイジンオー」に出てくるダイジンオーと思われ、警視庁はTV局や番組制作者から事情を聞くとともに、愉快犯の仕業という方向からも捜査を進めるとしております』 「……」 「ん、聞こえんかったんか? 元気ないやんけ? なんかあったんか? しかしなんや、ダイジンオー? そんな奇天烈なやつがこの世界におるとはなー。て、まあここに魔法少女がおるんやからおってもおかしゅうないか? なあ、よしのん?」 ぱちっ(チャンネルチェンジ) 『ここが、現場です。見えますか! ○○公園のシーソーなどいくつかの遊具が完全に、もう完全に破壊されております! もう、ダンプカーが突っ込んだような惨状です!』 「……」 「なんや、ノリわるいな? せや、意気揚揚と「萌え」を稼ぎに行く、って言っとったけど。あ、そうか。ぼちぼちよいのんもこなれてこの世に魔法の凄さちゅうもんを広めたから、そんなに疲れとんやろ。やったな、よしのん!」 確かに由乃は何かを広めた。確かに何かをやって全国ネットでニュースにもなった。だが、決してサンペイの思うものでは断じてなかった。 ぱちっ(チャンネルチェンジ) 『「サ、サンダァァース!! お、お願いでぇーす、ダイジンオォォー!! サンダァースを返してぇぇー!!」…このように、現場からは被害に遭われた方から悲痛ともいえる叫びが聞こえてきます。地元市民からは、ダイジンオー許すまじ、といった…』 「うわー。か弱き市民の財産を略奪するなんて酷いやっちゃな! よし、よしのん! 世のため人のため次はこの悪の権化を狩って、生まれた来たことを後悔さしてやるんや!」 後悔は……もう、間に合っている。 がばっ! そのとき由乃の手が物凄いスピードで動き、サンペイからリモコンを奪った。 ぱちっ(TVのスイッチOFF) 「な、なんや。いきなりなにするんや! せっかく次のターゲットを決めようとしたとこやのに」 「……るさい」 「なんや? 今、なんていったんや?」 ぷちっ(よしのんスイッチON) 「うるさぁぁーい!! 私だってね、がんばった、がんばったのよ!! でもね、だめだった。私、悪くない。すべて、こいつ。このトンデモステッキ。こいつのおかげなのよぉぉー!!!」 ぴかっ ぴかっ ぴかっ 「褒め☆TELL? てへ」 「2度とコールできんようにしたろうかぁぁー!!! マジ狩るぞこらぁぁぁー!!!」 がっちゃん!! つーつーつー 後にこの事件は「はぐれダイジンオー街へぶらりと一人旅」と呼ばれ。街を爆走するそれを見てしまった幾人かの人に軽いトラウマを、そしてある一人の少女にぬぐいきれないほどのトラウマを植え付けることになった。 終わり
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