■ 存在 聖を起さないように気をつけて布団を抜ける。 あたしはパーカーを羽織ると、携帯とタバコを手に玄関を出る。 夏の朝の涼しい空気を感じながらタバコに火を点ける。深く煙を吸い込むと、一気に吐き出す。 (あたし、何してるんだろう。傷心の聖に同情してあんな事するなんて…) あたしは携帯のメールフォルダから、『to水野蓉子』と記されたメールを再び開く。 『多分ですが、今夜、そちらに聖が行くと思います。 もし来たら、何も聞かずに一晩泊めてあげてくださいませんか? 以前お話しした、聖の【心の傷】に関する事が今朝あったようです。とてもふざけた話だとは思いますが、お願いします 水野蓉子』 一通り読み直すと、あたしは『福沢祐巳』と記されたメールを開く。 『景さん、ごきげんよう。実は今朝、聖さまのご友人がリリアンに来られました。 彼女は聖さまと色々とあった方で、突然の再会に、聖さまは表面上は冷静でしたが、 内面ではかなり動揺していたようで、別れてからはかなりナーバスになっていました。 こういう時は必ず景さんの家に行かれるので、来ましたら話相手になってあげてください』 実際に会った聖は、いつかの祐巳ちゃんのようにボロボロで、とても痛々しかった。 あたしは聖を抱き締めて、赤子をあやすように、何度も何度も頭や背中を撫でた。 気付けばあたしは聖にキスをし、聖の身体中を愛し、生まれたままの姿で温もりを分け合って眠っていた。 (アノ時の聖って、素直で何気に可愛かったなぁ) ふと、そんなことを考えていると、頬を撫でるように柔らかで涼しい風が吹き、軒に吊していた風鈴がチリリンと鳴いた。 多分、聖にとってあたしは、恋人というより姉的な存在で、弱味などをすべて見せれる存在なんだろう。 あたしは吸い殻を携帯灰皿にねじ込むと、大きく深呼吸した。 (さて、そろそろ朝ご飯でも作りましょうかね。ついでに笑顔で聖を叩き起こして) それがあたしの、今の存在理由なんだだろうから… はい、景さんと聖さまのお話です。 タイトルは作品のイメージなどから、アニメ版ダカーポ後期EDからの引用です。 当初は、景さんと蓉子さまにタッグを組ませて、祐巳に対するお痛の過ぎる聖さまにお仕置をし、最後に志摩子さんに仕上げをさせる、 お得意のパターンで行こうと考え、実際、構想してた1/3ほど書いたんですが、 ふとした瞬間、『これじゃ、景さんの深みと聖さまの味が出ないよな』と思い、書き直しをしたのがこれです。 【心の傷】については皆さんのご想像にお任せますが、自分の聖さまのイメージは、心の骨組みがかなり細い人で、 景さんは姉御肌の、例えば声優の松本梨香さんみたいな感じです。 実は当初、2人の描写はもっと直接な表現をしてたんですが、さすがに鯨さまのとこで、この表現はヤバいだろうと考え、 自主規制である程度、柔らかな表現に換えてます。 次は誰をターゲットにするかわかりませんが、コメディになると思います(やりたいネタが2つ3つあるんで) まぁ、真美&蔦子は75%出て来るでしょうがね。 昨日より今日のあなたが幸せで、明日のあなたが今日より更に幸せでありますように…
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