■ イメージは時に、かなりのダメージを与える事になる
 
 
 
 
「真美さ〜ん。明日、都営プール行こ〜」
 夏休み真っ直中のある日、自宅の自室で、前日から泊まりに来ていた日出実と共にダレていると、そんな内容の電話が蔦子から来た。
 連日の猛暑に、さすがの真美もやられていたので、「うん、行く。日出実も連れてくわ」と即答した。

 そして翌日。
 集合場所のM駅前には真美と日出実、そして蔦子の妹である笙子の3人が待っていた。
 すでに待ち合わせ時間から5分ほど過ぎているが、まだ蔦子は現れない。
 3人の格好は、真美と日出実はジーンズに、ラインの色違いのスニーカー、前後に大きくロゴマークが入ったプーマの、
真美が青で日出実が赤のTシャツで、笙子が水色のキャミソールに白のカッターシャツ、
白の綿パンにローヒールのミュールだった。
「珍しく蔦子さんが遅れてるわね」
 珍しそうに真美がつぶやく。
 すると突然、背後から「みなさん、ごきげんよう。今日も暑いわね」と、見知らぬ女性に声を掛けられた。
 私服の自分に、リリアン流の挨拶をするという事は、どこで会った事がある人だと考えた真美は、必死に思い出していた。
 しかし、答えは笙子によってもたらされた。
「お姉様、遅刻ですよ」
 それを聞いた新聞部姉妹は驚いた。
「つ、蔦子さん。め、め、め」
「麺つゆ?」
 すかさず、笙子から「お姉様、マイナス50点」という採点が入る。
「はいはい、眼鏡ね。最近、プライベートはコンタクトなのよ。まぁ、レンズを挟んだ視界の方が、まだまだ安心できるんだけどね」
 そう言うと、蔦子は胸ポケットに挿していたサングラスをかける。
 髪を後ろで纏め、赤のTシャツに白のカッターシャツに黒のジーンズにサングラスという蔦子の格好は、意外と似合っていた。
「じゃあ、行きましょうか?」
「そうね。時間も勿体ないし。それにしてもやられたわ」

 プールに行く途中なバスの中で、真美は蔦子に色々と質問を浴せた。かわら版に載せないと断った上で。
「はじめは祐巳さんたちと行ったボードよ」
「あぁ、あの時。眼鏡がかけれないからって、確かにそうだったわ」
「あの旅行の後、笙子に『あたしといる時には、お姉様もいつもと違う格好しませんか?』って言われてね」
 纏めている髪を触りながら、蔦子は話す。
「そういう理由か。まぁ、蔦子さんじゃなければ何の問題も無い話ね」
「そうそう。妹が風邪をひいたって聞いて、制服のままバイクでぶっ飛んで新潟行く紅薔薇のつぼみよりは幾分マシなはずよ」
「あれには祐巳さんもびっくりしてたわね」


 都営と言いつつも、4人が来たプールには2つのスライダーもあるほど大きく、結構な人出だったので、
まとまって更衣室のロッカーが空いてなかった。
「着替えたら、出たところにある自販機の前ね」
 そう決めると各自、着替えるためにスペースへ向かう。

5分後

 今度は真美、日出実、蔦子が先に出て、笙子を待っていた。
 その間に、互いの水着の評価が始まった。
「まぁ、ブルーって無難と言えば無難よね」
「スクミズ系って、一般人にはよく合うから」
「でも、高校に入る前に買った物なんで、お腹や胸のあたりが微妙に変化してますけどね」
 日出実はそういって体を隠すように持っていた上着を着る。
「それに比べ、真美さんは背中が大きく開いてて、しかもグレーだし。意外や意外」
 そう言って蔦子はシャッターを切る真似をする。
「いや、駅ビルで見てて、胸のハートマークのワンポイントとかが可愛くて衝動買いしたんだけど、あとで背中に気付いたのよ」
「まぁ、真美さんって比較的スタイル良いし、綺麗な背中してるから良いと思うよ」
「そう言う蔦子さまだって、スタイル良いじゃないですか」
「にしても、なぜに競泳用水着?」
「水泳部のさなえさんからもらったのよ。本人曰く『胸がキツくなった』らしいわ。
あたし、声優の佐藤利奈と同じ3サイズだけど、それより大きいって…」
「蔦子さん…」
「ケンカ売ってますか?」
 新聞部姉妹が鬼のような形相で蔦子をにらみ付ける。
 そこに、着替え終えた笙子がやって来る。
「あれ、あたしがビリですか」
「……」
「……」
「……かなり着痩せするのよ、笙子」
 蔦子は顔を横に向けながらつぶやく。
「笙子ちゃん、ちょっと待っててね」
 そう言うと、真美と日出実は蔦子を引っ張って行き尋ねた。
「○○ぐらい?」
「ほぼ正解。ちなみに祥子さまより高低差があります」
「あの可南子さんでもC止まりだから、あれは脅威ね」
 そんなボティを紺色のスクール水着に包んでいる笙子は、不思議そうな表情で3人を見ていた。


「…気を取り直して、泳ぎましょうかね」
 まずメインプールである流水プールに4人は向かう。
「そういえば蔦子さん、泳ぐの上手よね」
「実は小学生の時、スイミングスクールに入れられてたのよ。だから体育で唯一まともな成績とれるのよ」
 よく一緒に体育の補習を受けているので、運動がそれほど得意ではないのは確かである。
「そういえば、一度も補習受けてないよね」
「1回見学したけど、理由が月のものだったし、他の機会にちゃんと出来たのが良かったのか、補習は免除された」
「良いな。由乃さんなんか息も絶え絶えで25メーターを泳いでたわよ」
 そう言って、真美は後輩2人の方に顔を向ける。
「2人は?」
「メドレーの泳法は一応、普通に泳げますよ」
「あたしは日出実さんと違い、バタフライ以外なら普通に泳げます」
 その発言に、2人の姉はショックを受けた。

その後、造波プールで楽しんだあと、スライダーで遊んだり、25メートルプールで泳いだりして、
プールを満喫した。

 時間は流れて始業式

 部室のパソコンで新学期号の記事を書いていると、バタバタと足音を立てて部員が部室に入って来る。
「ぶちょー。スクープですっ!!新聞部の内藤笙子さんが、武嶋蔦子さま以外の方からロザリオをもらっていました!!」
「嘘じゃないわね?証拠写真は?」
「これです」
 そう言って、部員はデジカメの画像を見る。
「……ん〜」
 しばらく唸ると、真美は部員に、「これ、少し借りるわよ」と言い残して部室を出て、隣の写真部部室に向かった。


「あら、綺麗に写ってるわね」
「お姉さまも綺麗です」
「で、これは掲載するの?あたしは別に良いけど?」
 軽い調子で蔦子は言うが、真美は首を横に振る。
「蔦子さんには、まだまだこれ(眼鏡なし)でやって欲しい仕事があるし、なによりこれは『プライベート』の写真でしょ?」
『眼鏡なしの蔦子が、笙子にロザリオを渡す瞬間』と言う写真に、そういう判断を真美は下した。
「新聞部としては、オフィシャルな『メガネをかけて、カメラを持った』蔦子さんにロザリオ授与をお願いしたいんだけどね」
 そう言うと、真美は立ち上がりる。
「んじゃ、あたしは戻るね。あっそうそう、笙子ちゃん。これ(デジカメ)預けるから、10分以内
に『好きなだけ』プリントしておいてね」
 そう言って、真美は自分の部室へ帰って行った。

 さらに翌朝

『衝撃!!ついに武嶋蔦子に妹が誕生!!』と言う記事と、蔦子と笙子のツーショット写真がかわら版に掲載されていた。
 しかし、本当のスクープは、裏面に書いてあったりする。
「ねぇねぇ、由乃さん。裏面の『TMネットワークの、眼鏡を外して、七三を解いて』に載ってる写真の、
真美さんと日出実ちゃんの間の美人、誰だろうね?」
「かなり美人よね…」
「誰だろう…」
「「う〜ん…」」







あとがき

去年の夏に書き始め、その間に他のネタが浮かんでいたので放置していたものを、
メインPCの入れ替えを機に書き上げ、放置していた作品で、川菜にしては珍しい、PCの方で製作進行していたものです。
今回、携帯を替える事になり、投稿する事になりました。
2作連続でバストの話が出てくることになりましたが、全くの偶然です。
 この2組の姉妹は好きですね。とくに笙子ちゃんと蔦子さんの設定はめちゃ気合い入れてます。
(ちなみに、佐藤利奈さんとは蔦子さん役の声優さんで、ファンや他の声優さんの間で、スタイルが良い事で有名です)
 この蔦子さん、これからどんどん登場すると思いますので、可愛がってあげてくださいね。
 では、ごきげんよう。

PS.プールのエピソードは、僕の飲み友達の女性から聞いた、高校時代の体験談です。
 
 

 
 
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